池尻大橋駅から少し歩いた三宿交差点近くに、2024年4月にオープンした「三宿おにぎり AZUMAYA」をご存知でしょうか。世田谷公園のほど近くにあるこちらのお店、南魚沼産のコシヒカリを使ったおにぎりが人気で、「日常という旅のお供に」をコンセプトに、忙しい現代人のために「片手で食べられるおにぎり」を追求しているそうです。
移動中や仕事の合間に気軽に食べられる――。確かに便利ですよね。でも「片手で食べられる」という便利さの裏側に、実は私たちの口腔健康に関わる大きな問題が隠れています。
今回は、現代人の食生活と歯の健康について、一緒に考えていきましょう。

「片手で食べられる」が象徴する現代の食生活
池尻大橋エリアで愛される「忙しい人のためのおにぎり」
三宿おにぎり AZUMAYAは、朝7時から14時半まで営業しており、通勤前やランチタイムに立ち寄る方が多いそうです。「目的地の前に気軽に立ち寄れるお店」を目指しているというコンセプトからも、忙しい現代人のライフスタイルに寄り添った姿勢が伝わってきます。
池尻大橋や三軒茶屋で働く方、世田谷公園を散歩する方にとって、「ふわっと握られた」食べやすいおにぎりは魅力的でしょう。スマートフォンを見ながら、パソコン作業をしながら、歩きながら――片手が空いていれば食事ができる。これが現代の「ながら食べ」の象徴とも言えます。

便利さの裏にある「噛まない食事」のリスク
しかし、ここに大きな落とし穴があります。
「片手で食べられる」ということは、もう片方の手は別の作業をしているということ。つまり、食事に集中していない状態です。スマートフォンを見ながら、パソコンで作業をしながら、歩きながらの食事では、自然と噛む回数が減ってしまいます。
また、柔らかく握られたおにぎりは確かに食べやすいのですが、それは同時に「あまり噛まなくても飲み込める」ことを意味します。現代の加工食品は軟らかいものが多く、コンビニやファストフードも同様です。このような食生活を続けると、唾液の分泌が十分に行われず、細菌が口の中で繁殖しやすくなり、虫歯や歯周病にかかりやすくなるのです。
「ながら食べ」が歯と顎に与える影響とは?
早食い・ながら食べで起こる口腔トラブル
「ながら食べ」の最大の問題は、食事に意識が向いていないため、早食いになりやすいということです。
何かをしながら食事をすると、噛む回数が10回程度、場合によってはそれ以下になることも珍しくありません。現代人の平均咀嚼回数は1口あたり10〜20回と言われていますが、これは推奨される30回と比べて明らかに不足しています。
早食いは、食べ物が十分に細かくならないまま飲み込まれるため、胃腸への負担が大きくなります。また、満腹中枢が刺激される前に食べ終わってしまうため、食べ過ぎによる肥満のリスクも高まります。さらに、血糖値が急激に上昇しやすくなり、糖尿病のリスクも指摘されています。
そして何より、歯と顎への影響が深刻です。
噛む回数が減ると歯周病リスクが高まる理由
噛む回数が減ると、唾液の分泌量が減少します。
唾液には抗菌作用や殺菌作用があり、口の中を清潔に保つ重要な役割を担っています。唾液に含まれる消化酵素が食べ物の分解を促すだけでなく、歯の表面を洗い流し、虫歯菌や歯周病菌の増殖を抑えてくれるのです。
しかし、よく噛まずに食べると唾液の分泌が不十分になり、口の中が乾燥しがちになります。これを「ドライマウス」と呼びます。ドライマウスの状態では細菌が繁殖しやすく、虫歯や歯周病、口臭のリスクが高まります。
また、歯周病は単なる口の中の病気ではありません。歯周病菌が血管に入り込むと、心疾患や糖尿病、誤嚥性肺炎などの全身疾患のリスクを高めることが分かっています。特に糖尿病と歯周病は相互に影響し合い、悪循環を生む可能性があります。
忙しくても「しっかり噛む」を習慣にするコツ
では、忙しい毎日の中でどうすればよく噛む習慣を身につけられるのでしょうか。
まず大切なのは、「食事の時間を確保する」ことです。10分でも15分でも構いません。食事に集中する時間を意識的に作りましょう。
次に、「ながら食べ」をやめること。スマートフォンを置き、テレビを消し、仕事の手を止めて、食事そのものを味わう時間にします。
そして、「ひと口ずつ箸を置く」習慣もおすすめです。口の中のものを飲み込んでから次を食べるというリズムが自然と生まれ、噛む回数が増えます。
おにぎりを食べるときも同じです。一口が大きすぎないように気をつけ、口の中でしっかりと噛みしめてから飲み込むようにしましょう。米の甘みや具材の風味を感じながら食べることで、食事の満足感も高まります。
時間がない時でも実践できる口腔ケアの最低ライン
ランチ後の3分間でできる簡単ケア
理想を言えば、毎食後にしっかりと歯磨きをするのがベストです。でも、仕事中や外出先では難しいこともありますよね。
そんなときでも、最低限できることがあります。
まずは「水で口をすすぐ」こと。食後にコップ一杯の水で口の中をゆすぐだけでも、食べ物のカスや汚れを洗い流すことができます。30秒程度で済むので、洗面所に行けない状況でもペットボトルの水で対応できます。
次に、「キシリトールガムを噛む」のも効果的です。ガムを噛むことで唾液の分泌が促され、口の中の自浄作用が高まります。ただし、必ず砂糖不使用のキシリトールガムを選んでください。
時間が取れる場合は、3分間の簡易歯磨きでも構いません。歯ブラシがあれば、歯と歯茎の境目、奥歯の溝、前歯の裏側など、汚れがたまりやすい部分を重点的に磨きましょう。
携帯できる口腔ケアグッズのおすすめ
外出先での口腔ケアを習慣化するには、携帯用のケアグッズを常備しておくことが大切です。

携帯用歯ブラシセット
コンパクトなケース付きの歯ブラシと小さなチューブの歯磨き粉がセットになったものがおすすめです。ドラッグストアで手軽に購入できます。
個包装タイプのマウスウォッシュ
歯磨きができないときでも、マウスウォッシュで口をすすぐだけで口臭や細菌の繁殖を抑えることができます。個包装タイプなら衛生的で持ち運びも便利です。
歯磨きシート
指に巻き付けて歯の表面を拭き取るだけで、簡易的な口腔ケアができます。水が使えない場所や、災害時にも役立ちます。
口腔スプレー
スプレータイプなら1〜2プッシュで口の中をリフレッシュできます。人と会う前の口臭ケアにも便利です。
うがいだけでも違う!外出先でのオーラルケア術
食後30秒の「ブクブクうがい」で、口の中の食べカスの約60〜70%を除去できると言われています。これだけでも虫歯や歯周病のリスクを大きく下げることができます。
うがいのコツは、頬を膨らませたりへこませたりしながら、水を口の中で動かすこと。歯と歯の間、歯と歯茎の境目に水流が当たるよう意識すると効果的です。
また、お茶や緑茶で口をすすぐのもおすすめです。緑茶に含まれるカテキンには抗菌作用があり、口臭予防にも効果が期待できます。
現代人こそ知っておきたい「噛むこと」の大切さ
咀嚼が歯を強くする科学的理由
噛むという行為は、単に食べ物を細かくするだけではありません。噛むことで顎の骨や歯に適度な刺激が加わり、それが歯を支える組織を強化するのです。
よく噛むと唾液がたくさん分泌されます。唾液には、歯のエナメル質を補修する「再石灰化」という働きがあります。虫歯になりかけている初期の状態であれば、唾液の力で修復されることもあるのです。
また、咀嚼は脳への血流を増加させ、脳の機能を活性化させる効果もあります。記憶力や集中力の向上、ストレスの緩和、さらには認知症予防にも関係していると言われています。
日本咀嚼学会では、健康維持のために「ひと口30回」の咀嚼を推奨しています。これは健康な人が安全に飲み込むための目安であり、咀嚼の重要性を示す世界共通の数字です。
食事の質と口腔健康の深い関係
噛む回数を増やすには、食材選びも大切です。
食物繊維の多い野菜、弾力のあるイカやタコ、歯ごたえのあるごぼうやたけのこなど、自然と噛む回数が増える食材を意識的に取り入れましょう。逆に、軟らかい加工食品ばかりを食べていると、噛む力が衰え、顎の発育にも影響します。
おにぎりを選ぶときも、具材に注目してみてください。梅干しや昆布、鮭など、しっかりとした食感のある具材を選ぶと、自然と噛む回数が増えます。
また、食事の際に汁物を控えめにすることもポイントです。水分で流し込んでしまうと、噛む回数が減り、唾液も食べ物と十分に混ざりません。
おにぎりでも意識できる「ひと口30回」の実践法
「おにぎりで30回も噛めないよ」と思われるかもしれません。確かに、軟らかいものは30回も噛み続けるのは難しいですね。
でも、大切なのは回数そのものではなく、「ゆっくり味わって食べる」という意識です。
おにぎりを一口サイズに小さくして、口の中でお米の粒を感じながら、甘みが広がるのを味わってみてください。具材の風味や海苔の香ばしさに意識を向けると、自然と噛む回数は増えていきます。
最初は10回から始めて、慣れてきたら15回、20回と少しずつ増やしていくのも良い方法です。「噛むこと」そのものを楽しむ気持ちで取り組んでみましょう。
食事の時間は、単に栄養を摂取するだけの時間ではありません。心と体を整え、自分自身をいたわる大切な時間です。どんなに忙しくても、その時間だけは食事に集中する――それが、あなたの歯と全身の健康を守ることにつながります。

まとめ:忙しい毎日でも歯の健康は守れる
「片手で食べられるおにぎり」は、確かに現代人の忙しいライフスタイルに寄り添った素晴らしい商品です。でも、その便利さに頼りすぎて、「ながら食べ」や早食いが習慣になってしまうと、歯と全身の健康に大きなリスクをもたらします。
大切なのは、忙しい中でも「意識的に噛む」こと、そして「食後のケアを怠らない」ことです。
- 食事の時間を確保し、「ながら食べ」を避ける
- ひと口30回を目安に、よく噛んで食べる
- 食後は必ず水で口をすすぐ
- 携帯用の口腔ケアグッズを常備する
- 定期的に歯科健診を受ける
これらを心がけるだけで、虫歯や歯周病のリスクは大きく減らせます。
池尻大橋や三軒茶屋で働く皆さん、世田谷公園を散歩される皆さん、忙しい毎日の中でも、ご自身の歯の健康を大切にしてくださいね。
気になることがあれば、いつでも池尻シティ歯科クリニックにご相談ください。










